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2013.07.12

調停と訴訟の違いについて

市役所の法律相談などに行くと、よく相談者に調停と訴訟との違いを説明することがあります。そこで、今回は、調停と訴訟との違いを、法律の手続規定はさておいて、大まかな手続の流れに沿って説明してみましょう。

 

調停手続

まず、調停とは、当事者が話し合いを行う手続であり、特に裁判官が判決のような判断を下したりすることはありません。したがって、調停を申し立てても、相手方が裁判所に出頭しなかったり、出頭しても話し合いがつかなければ、調停は不成立(不調)となります。そうなった場合、調停手続はそれで終了してしまいますから、次は訴訟を起こすなりしなければ事態は進展しないことになります。

調停といっても、離婚や遺産分割等の家事に関することは家庭裁判所に申し立て、貸金や損害賠償等の請求の場合は、簡易裁判所に申し立てなければなりません。申し立てる内容によって管轄する裁判所が違いますので注意を要します。しかし、調停の申立は、申立書の用紙が裁判所に備えおかれており、それに必要事項を書き込むことにより申し立て可能ですから、一般の方でも、特に弁護士に依頼しなくても申し立てることが出来ます。一般の方が自分で申立を行うなら、費用も印紙代や郵券代等で済みますから安くつきます。必要書類なども、裁判所の受付に行けば、たぶん親切に教えてもらうことが出来るでしょう。

例えば、離婚調停を家庭裁判所に申し立てた場合を例にとりましょう。申立を行うと、裁判所が第1回の調停期日を決めて、これを相手方(この場合は他方の配偶者)に通知してくれます。相手方が調停期日に裁判所に出頭すれば話し合いが始まります。この話し合いは、当事者同士が直接行うのではなく、調停委員を仲介役として行います。つまり、当事者双方が、交互に調停室に入り、調停委員にそれぞれ自分の言い分を伝え、調停委員がこれを他方に伝えるという方法による話し合いです。申立人の控え室と相手方の控え室は別々になっていますから、原則として、話し合いを行っていても申立人と相手方が直接顔を合わすということはありません。調停委員は、たいてい年配の男性と女性の2名がその任にあたっています。裁判官が出てくるのは調停が成立するときくらいのものです。調停委員は、時には自分の意見を述べたりして、話し合いが円滑に成立するように努力してくれるわけですが、必ずしも法的知識に基づいて意見を述べているというわけでもない場合が多いので、調停委員の意見は、人生経験豊富な方の貴重な意見としてとらえた方がよいでしょう(もちろん特に専門知識を要するような調停では、その分野に詳しい方が調停委員になっている場合もありますので要注意。)。

このように話し合いが進み、離婚調停であれば、離婚することや、子どもがいればその親権をどちらがとるか、養育費はどうするか、財産分与はどうするか、慰謝料はどうか、子どもとの面会交渉はどうするかなどにつき話し合いがまとまれば、調停成立の運びとなります。調停が成立すれば、合意の内容をまとめた調停調書が作成され、調停調書は判決と同じ効力を持ちます。したがって調停で決めた養育費や慰謝料などを支払ってもらえない場合には、調停調書に基づいて相手方の財産に対し、強制執行をかけることも可能になります。ところが一方、こどもの親権をどちらがとるか等で話し合いがどうしてもつかない場合、調停は成立せず、調停不成立となります。この場合は、前述のように調停手続はそれで終了しますので、申立人としては、その後は離婚訴訟の提起をするなりを検討しなければ、事態は進展することはないでしょう。以上が調停手続の大まかな流れです。

 

訴訟手続

では、次に訴訟とはどういうものでしょう。少額訴訟というものもありますが、ここでは通常の訴訟手続を念頭に、その大まかな流れを追ってみましょう。

訴訟を提起するには、訴状を作成して管轄裁判所に提出して提起します。訴状には、請求する権利ごとに定まった要件事実(権利が発生するのに必要な事実)等必要事項を記載しなければなりません。例えば、貸金返還請求事件であれば、金を貸し渡したことと支払期限の到来が要件事実です。そして、定められた印紙額や郵券も添えて提出します。

訴状が受け付けられると、裁判所は、第1回の口頭弁論期日を定め、訴状等を相手方すなわち被告に送達します。定められた期日に被告が何の答弁もせず出廷しなければ、原告の言い分を認めたものとして、原告勝訴の判決が下されます。つまりは、訴訟の場合、被告には応訴義務があり、応訴しない場合は敗訴判決という不利益を被るのです。被告が口頭弁論期日において答弁書を提出したり、出廷して応訴した場合、審理が始まります。

口頭弁論期日において、原告が訴状を、被告が答弁書を陳述し、その後の期日においても、双方が準備書面に各自の主張を書いて提出し、基本的に書面によって双方の主張の食い違い、すなわち争点を整理していきます。訴状や答弁書、準備書面の他に、書証(証拠書類)があれば、原被告各自がこれらを提出します(原告が提出する書証は甲号証、被告が提出する書証は原則的に乙号証として提出します)。そしてある程度争点が明確になってくると、裁判所は争点整理を行います。

例えば、貸金返還請求訴訟において、原告が被告に対して500万円を貸したので返せと主張するのに対して、被告が、借りたのは200万円で、300万円は工事代金として受領したものだ、しかも借りた200万円についても、自分のトラックを渡して終わりにしてもらった(代物弁済した)と主張した場合、争点は、大まかには、①原告が貸したのはいくらか、②被告が行ったという工事契約の詳細、③被告がトラックを代物弁済したか、の大きく3点になります。

争点が明らかになれば、原被告は、各自自らの主張を立証するために、人証申請をし、尋問が行われます。ここで、証人や原被告本人に対する尋問が行われ、裁判所は、原被告どちらの言い分が正しいのか、心証を形成します。尋問が行われる前後には、当事者双方において和解の途がないのか模索したりもします。

尋問が終わり、和解の途もないということになれば、裁判所は、口頭弁論を終結し、判決言い渡し日を決めて判決を下します。判決というものは、基本的に、原告の請求を認容する(もちろん一部認容というのもあります)か、あるいは棄却するかの2種類しかありませんので、まさしく白か黒かという判断が下されるわけです。

但し、注意しなければならないのは、裁判官も人間であり、事実を認定し、それを法的に評価し、判決を作成するにあたって、主観的判断を完全に排除することは不可能であるということです。したがって、同じ事件でも裁判官が代われば、違う判決になる場合も往々にしてあるということです。よく、地方裁判所の判決を、高等裁判所が覆すということがあるのも、裁判官によって事件の見方が違うことのあらわれといえるでしょう。このように、判決というものは、勝敗の判断が微妙な事件になればなるほど、それを下してもらうことが一種の賭けのようなものになるのです。ですから、勝敗が微妙な事件においては、オール・オア・ナッシングの判決に賭けるより、何とか当事者双方が納得できる内容の和解を成立させることのほうが無難な場合もあるのです。和解か判決かの判断は、裁判官が原被告どちらを勝たせるつもりか自分の心証を語らず、ポーカーフェイスに徹している場合などには、事案によっては本当に難しいことがあります。

それはさておき不幸にも、敗訴判決を下された被告または原告は、判決に不服であれば、判決書を受領してから2週間以内に上訴(控訴・上告)することが出来ます。原告の勝訴判決が確定すれば(確定しなくても判決に仮執行宣言というものが付されていれば)、その判決に基づいて被告の財産に対し、強制執行が可能になります。

 

まとめ

少々長くなりましたが、以上が、調停手続と訴訟手続の違いです。調停手続は、一般の方でも簡易に申し立てることができる手続ですが、あくまでも話し合いですので、相手方が出頭しなかったり、話し合いがつかなければ調停不成立です。但し、話し合いがまとまり、調停が成立すれば調停調書は、判決と同一の効力を有します。

訴訟手続は、被告に応訴義務があり、被告が、答弁書も提出せずに出廷しなければ敗訴の不利益を被ります。また訴訟においては、当事者の話し合いがつかなければ判決が下され、原被告のいずれかの勝訴・敗訴が明白にされます。訴訟手続は、一般の方の手に負えないものが多いと思われますので、やはり早めに弁護士に依頼された方がよいと思われます。

2012.12.21

借地ー借地契約の更新拒絶の正当事由について

事例

A土地の地主Xさんは、パンの製造業者であり、営業上工場の拡大が不可欠な状態であるが、新規に土地等を取得するほどの資金的余裕がありません。またXさんは、パン工場の拡大を図るならA土地以外にないと考えており、それが営業上もベストな立地条件のようです。

一方借地人のYさんは、10年前からA土地を賃借しており、既製服製造卸売り業者であり、A土地で工場を営んできました。Yさんは、10年間この工場を営んできて、A土地周辺を基盤として得意先を有しており、経営もそこそこうまくいっています。しかしながら、工場が多少手狭になってきたこともあり、近隣に適当な工場用地がありそうな状況なので、工場を移転しようかと時々考えていたところです。

Xさんとしては、多少の立ち退き料を支払ってでも、近く期間満了となるYさんとの借地契約の更新を拒絶し、A土地で自身のパン製造工場を営みたいと考えていますが、かかる更新拒絶に正当事由が認められるか考えてみましょう。

 

正当事由の内容

XYの借地契約は、10年前からあるようですから、借地借家法ではなく、旧借地法の適用になると思われますが、契約の更新拒絶に正当事由が必要であることに変わりはありません。

この正当事由の内容は、借地借家法によって、より具体的に定められていますので、これが旧借地法適用の場合でも参考になるでしょう。借地借家法では、更新拒絶のためには、

①賃貸人及び賃借人が土地の使用を必要とする事情

②借地に関する従前の経緯

③土地の利用状況

④賃貸人が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引き換えに借地人に対して財産上の給付(いわゆる立ち退き料等)を申し出た場合のその申し出を考慮して、正当事由を判断するものと規定していますので、本件でもこれらの要素を総合的に考慮することになるでしょう。

なお、①~④の判断要素には、主従があり、①が主たる判断要素、②~④は、従たる要素と考えられます。したがって、そもそも①の賃貸人の土地使用の必要性がなければ、その他の②~④の従たる要素を具備しても、正当事由は認められそうにありません。

 

本件の場合

本件においては、①A土地の使用を必要とする程度においては、Yよりも地主Xの方が勝っているのではないでしょうか。したがって、主たる要素は具備していそうです。②の従前の経緯は、事例ではよく分かりません。③土地の利用状況という点においては、Yは、現にA土地で既製服の製造卸業を営んでおり、A土地周辺を基盤として得意先も持っており、経営もそこそこうまくやっている、ということですから、Xにとっては、あまり有利な要素とはならないでしょう。

そこで問題となってくるのが、④Xが支払っても良いと考えている、立ち退き料の額です。かかる場合の立ち退き料の算定は、さまざま考えられるでしょうかが、少なくともA土地の借地権価格(借地法により保護された借地を使用収益することにより借地人に帰属する経済的利益を表示した金額)やYの営業補償(工場移転によりYが被る営業上の不利益の補償)、工場の移転費用等が問題になることでしょう。

結局Xが、Yに対して、いくらの立ち退き料を提示できるかが、重要な要素となることでしょう。ただ、Xとしては、新たな土地等を取得するほど資金的余裕がないから、A土地の契約更新の拒絶をするわけですから、Yに対して過大な立ち退き料を提供するわけにもいかないことでしょう。またYとしては、近隣に適当な工場用地がありそうな状況なので、工場を移転しようかと時々考えていたというのですから、Xとしては、このあたりも考慮してもらいたいところです。

結論として、本件の場合、XがYに対して相当の立ち退き料の提供を行った場合、契約更新拒絶に正当事由が認められる可能性がある、といったところでしょう(相当の立ち退き料とはいくらなのかは難しい問題です。)。

もっとも、立ち退き料の点で、XとYが合意に至れば、借地契約は合意解除できることはもちろんです。

2012.12.20

借家ー敷金返還と原状回復義務について

借家契約が終了する際には、借家人は借家を原状に回復をした上で、家主に返還、すなわち借家を明け渡さなければなりませんし、家主は、借家人から預かっていた敷金等を精算しなければなりません。この原状回復義務と敷金返還について考えてみましょう。契約によっては、敷金ではなく保証金であったり、礼金・権利金を家主に差し入れている場合もありますので、その違いも検討しなければなりません。

 

敷金

敷金とは、賃貸借契約上の賃借人の未払い賃料や原状回復費用等の債務を担保する趣旨で、賃借人が賃貸人に交付する金員で、賃貸借契約終了の際、これらの賃借人の債務を差し引いても残額がある場合は、当然返還されるべきものです。

 

権利金

権利金は、その性質が一義的ではありませんが、権利金の性質は、

  • 営業上の利益や場所的利益の対価
  • 賃料の一部前払い
  • 賃借権に譲渡性を付加する対価
  • その他

後述の礼金と同じ趣旨のこともあるようです。

権利金は、原則として、賃借人への返還が予定されていない点に特徴があります。但し契約上の賃貸借期間の満了前に契約が終了した場合には、賃借人は権利金を交付したかわりの利益を十分に享受していないと考えられるため、権利金の一部返還が認められる可能性があるでしょう。もっとも、③④の趣旨で交付された権利金が返還されることはないものと考えられます。

 

礼金

礼金は、一般的な住宅の賃貸借契約において権利金と呼ばれているものと同じです。その金額が低額な場合は、法的には賃貸人への謝礼(贈与)の趣旨か原状回復費用の前払いの趣旨かと思われます。したがって、かかる礼金は賃借人に返還されないでしょう。

 

保証金

保証金とは、ビルやマンションの賃貸借に際し、賃借人が支払うもので、一定期間据え置き後分割返還するとか、賃貸借契約終了時に一定額を差し引いて返還するとかの特約がなされているのが通常です。
保証金の法的性質についても、一義的には決められませんが、

  1. 建設協力金
  2. 貸金
  3. 敷金
  4. 期間途中に解約になった場合の空室損害補償
  5. 権利金等の性質

が混在していると考えられます。

 

敷金等の自動控除特約

賃貸借建物明け渡しの際、当然に敷金等の何割かを控除しその残額を返還する旨の特約が結ばれることがあります。いわゆる敷引き特約(自動控除特約)と呼ばれるものです。

その趣旨は、家屋の賃貸に伴う通常の損傷に関する原状回復費用に充当するものと考えられますが、具体的には、

①家屋の賃貸に伴う通常の損傷に関する原状回復費用は、本来家主が負担すべきだが、これを借主の負担とする趣旨、

②原状回復費用は契約終了時に具体的に計算し判明するはずだが、敷金等の何割かを差し引くという事前の合意で簡便化をはかる趣旨が考えられます。

判例は、かかる敷引き特約の有効性について、個別のケースごとにその合理性等から判断していますが、一般的には敷引き特約を有効と判断しているものが多く、不合理な特約である場合等にその特約の全部または一部を無効として取り扱っているようです。

 

原状回復につき特約がない場合の原状回復

前述のように賃借人は、賃貸借契約終了の際には、賃借物を原状に回復した上で賃貸人に返還、すなわち明け渡しを完了しなければならず、その後でなければ、敷金等の返還を受けることが出来ません。原状回復の内容について、契約に特約がない場合を考えてみましょう。

「原状に回復する」とは、賃借人が設置したものを取り除くという趣旨であり、借りた当時の賃借物の状態を復元することとは違います。したがって、通常の使用によって古くなった物の交換をするなどの義務は、本来ありません。

しかしながら、賃借人には、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)をもって賃借物を保管する義務も負っていますから、故意や過失で賃借物を毀損してしまった場合には、毀損部分の損害を賠償する義務があります。

したがって、賃借人が原状回復義務や善管注意義務に違反して損害賠償義務を負っている場合は、敷金等からこれらの賠償額が控除されて残額が返還されることになります。

逆に、賃借物の通常使用に伴う時間的経過による損耗(自然的損耗、たとえば畳、ふすま、障子やじゅうたんの時間的経過による損耗、結露や湿気による壁のクロスの汚損など)については、賃借人は責任を負わないという結論になるでしょう。

ただし、前述のように、契約に敷金等の自動控除特約がなされている場合で、それが有効と認められる場合、自然的損耗の原状回復費用は、敷金等の控除分によって填補されるでしょうから、結局賃借人が負担している結果となりますが・・・。

 

 

特約がある場合の原状回復

それでは、たとえば契約書に「賃借人は、契約終了時、畳、ふすま、障子を全部張り替え、壁のクロス、じゅうたんもすべて取り替えを行い、その費用全額を負担する。」など一切の原状回復義務を賃借人に負わせる趣旨の特約があった場合はどうでしょう。

まず、故意過失を問わず、一切の原状回復義務を賃借人に負わせる特約があっても、大修繕に該当する部分(壁のクロスやじゅうたんの取り替えなど)については、これを賃借人の責任とするのは、賃借人に酷なのでかかる特約部分は無効でしょう。

小修繕に該当する部分(畳、ふすま、障子の張り替えなど)の特約部分についてですが、かかる特約が無効とまでは言えないかも知れませんが、特約によって回復すべき汚損、毀損等には、自然的損耗は含まれないという判例もありますから、かかる特約があっても自然的損耗があるにすぎない畳やふすま、障子などを賃借人が全部張り替えなければならない結果にはならないものと思われます。

ただ、かかる特約によって賃借人が負担する原状回復の範囲については、賃料その他の賃借条件等を総合的に検討しなければ、即断は出来ないので注意が必要です。

2012.08.20

離婚について

離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。

 

協議離婚

協議離婚は、当事者双方が合意し協議離婚届出書を市区町村長に届け出て、これが受理されることにより成立する離婚です。夫婦間において話し合いが可能で、親権者の指定や、財産分与、慰謝料、養育費の額等が話し合いによって解決できる場合は、協議離婚の方法によることが可能です。

 

調停離婚

しかしながら離婚やこれに伴う親権者の指定、財産分与、慰謝料、養育費の額等で夫婦間の話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立て、話し合いを行うことになります。離婚については、いきなり訴訟を提起することは出来ず、その前に調停の申し立てをしなければならないきまりがあるのです(調停前置主義)。

離婚調停は、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てるのが原則です。家庭裁判所には調停申立用紙が備え付けられているので一般の人が自分で調停申立をすることも容易になっています。この申立用紙に必要事項を記入し、必要額の収入印紙や郵便切手、戸籍謄本を添付して提出すれば調停申立が出来るようになっています。

調停の進行は、家事審判官1名と調停委員2名の合議体である調停委員会が行います通常は、調停委員2名が夫婦双方の言い分を聞き取り、調整を行い、あとでまとめて家事審判官への報告を行います。調停の期日はおおむね1月に1度程度決められ、夫婦双方が家庭裁判所に出頭して、調停委員にそれぞれの言い分を話し、調停委員が双方の言い分を調整する作業を行っていきます。

経験豊かな調停委員が双方の言い分を聞き、双方が納得できるような譲歩を求める説得を行ってくれるので、当事者だけで話し合いを行うよりも合意が成立する可能性は高いと言えます。しかしながら調停手続きもあくまでも話し合いの手続きですので、当事者の一方がかたくなに自分の主張を変えないような場合(例えば離婚には絶対応じないと主張するような場合)には、調停は不成立となり、終了するしかありません。

当事者双方の話し合いがまとまり、離婚調停が成立するときには、調停調書が作成されます。この調停調書は確定判決と同様の効力を有し、調停成立によって離婚が成立します。申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚調停調書の謄本を添えて、市区町村長に離婚届を提出しなければなりません(報告的届出)。

 

審判離婚

調停が成立しない場合であっても、主要事項については合意にいたっている場合(離婚の合意は出来ているが、財産分与や子の監護の方法等にわずかな相違があるために調停にいたらないような場合)や、当事者の一方が遠隔地にいるために調停期日に出頭できないが離婚の意思は有している場合等に、改めて離婚訴訟を提起させるのは、申立当事者にとっても社会経済的にも無駄であることから、家庭裁判所が職権で調停に代わる審判を行うことがあります。

ただし、調停に代わる審判は、審判の日から2週間以内に審判内容に不満がある当事者から異議申立があると効力を失ってしまうので、審判を行うことが出来るケースは自ずと限られてくることになります。

 

裁判離婚

前述のように離婚訴訟を提起するためには、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立てなければなりませんが(調停前置主義)、夫婦双方の話し合いがつかず、調停不成立となり調停に代わる審判もなかったような場合には、離婚訴訟を提起することになります。

離婚訴訟は、
①夫婦が共通の住所を有するときは、その住所を管轄する家庭裁判所、

②夫婦の最後の共通の住所地を管轄する家庭裁判所区域内に夫又は妻が住所を有するときには、その住所地を管轄する家庭裁判所、

③夫婦が上記管轄区域内に住所を有しないとき及び夫婦が共通の住所地を有したことがないときは、どちらか一方の普通裁判籍の所在地の普通裁判籍所在地を管轄する家庭裁判所等に訴状を提出して提起します。

訴状においては離婚の請求だけでなく、財産分与、慰謝料、養育費の請求、親権者の指定も求めることが出来ます。しかし離婚訴訟を提起するとということになれば、通常当事者本人が行うことは困難ですので弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

離婚事由

離婚訴訟を提起できる場合は、次の場合に限られていて、かかる離婚事由が認められなければ、離婚等の請求は棄却されることになります。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。

また、裁判所は、①~④の離婚事由があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することも出来ます。

上記の離婚事由は、それぞれ次のような意味です。

(1)不貞行為=配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。いわゆる浮気はこの不貞行為に該当します。

(2)悪意の遺棄=正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を履行しないことを言います。

(3)3年以上の生死不明=3年以上も生存も死亡も確認できない状態が現在も引き続いていることを言います。

(4)強度の精神病=その精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務、ことに他方の配偶者の精神的生活に対する協力義務を充分に果たし得ない程度に達している場合を言います。

(5)婚姻を継続しがたい重大な事由=婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことを意味します。しかし、具体的にどのような事情をもってこれを認定するかは、裁判官の自由裁量に委ねられており、このことから抽象的離婚原因と呼ばれています。

(5)に該当する可能性のある事由としては、暴行・虐待、重大な病気・障害、配偶者の過度の宗教活動、勤労意欲の欠如、性交不能、親族との不和、性格の不一致などが考えられます。

上記の離婚事由が認められる場合、裁判所は離婚等の請求を認容する判決を下します。財産分与、慰謝料、養育費の請求、親権者の指定も求めていれば、これらの請求に対する判決も下されます。離婚請求認容判決が確定すると婚姻は将来に向かって解消することになります。そして、離婚請求認容判決が確定すると、その日から10日以内に、判決謄本と確定証明書を添えて、市区町村長に対し離婚届を提出しなければなりません(報告的届出)。

また、離婚訴訟においても通常訴訟と同様に和解により終結することがあります。しかしこの場合、離婚の届出は協議離婚として届け出ることになります。

 

有責配偶者からの離婚請求

最高裁判所大法廷昭和62年9月2日判決は、一定の要件のもとで有責配偶者(婚姻関係の破綻について責任がある配偶者、例えば愛人を作って自宅を出て、妻のもとに長年帰らなかった夫など)の離婚請求も許される場合がある旨判示しました。

すなわち、この判決は、「①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期間に及び、②その間に未成熟の子が存在しない場合には、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚を許容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって(離婚請求が)許されないとすることはできない」と判示したのです。

2011.08.29

最近の過払い金返還請求の状況

最近のサラ金等金融機関に対する過払い金返還請求の状況は、端的に言うと以前より時間や手間がかかるようになっています。

というのも、サラ金等金融機関は、過払い金の返還額について、まずもって交渉段階では利息を付しませんし、取引期間に空白期間があると、それぞれの取引が別取引だと主張し、10年以上経っている取引を見つけると、過払い金返還請求権が消滅時効にかかっていると主張すること等法的な主張を当然にしてきます。

さらには、自社の経営的苦境を訴え、過払い金元本額の5割程度の返還やひどい金融機関になると過払い金元本の5%程度の返還で勘弁して欲しいなどと懇願してきたりします。

返還期限においても、やはり自社の予算の都合を訴え、半年以上後の返還期限を提案してきたり、ひどい金融機関になると、長期の分割弁済を提案してきたりします。

サラ金等金融機関の担当者が有する裁量権はあまり広く認められていないようで、ある程度の返還額増額や返還期限の早期化の譲歩はするものの、それ以上は、担当者レベルではどうしようもないという返還金額や返還期限が提案されます。

かかる金融機関の提案する過払い返還金額や返還期限に応じることが出来なければ、もはや交渉から訴訟提起に方針を切り替え、やむを得ず不当利得返還請求訴訟を提起する場合があります。

訴訟ということになれば、原告側としては基本的に過払い金額全額及びこれに対する年5%の利息を請求していくことになります。

しかし、場合によっては、判決によっても年5%の利息が認められないこともありますので、早期に過払い金元本全額に近い金額が回収できるのであれば、訴訟手続中においても訴訟外または訴訟上において、サラ金等金融機関と和解することもあります。

結局のところ、交渉段階で和解できたとしても、訴訟提起後和解、判決に至ったとしても、現実に金員の返還が実現するまでには、過払い金返還請求の受任をしてから5ヶ月から半年程度の時間を要する場合が多くなったという状況です。

もっとも上記は一般論であり、金融機関によっては、もっと好条件で解決できたり、もっと悪条件の結果しか実現できない場合もあります。

連絡先

弁護士法人 関西はやぶさ法律事務所
〒520-0051 大津市梅林1丁目15番30号 林ビル本店2階
(JR東海道本線「大津」駅より県庁方面に徒歩5分)
※当事務所にはお客様専用駐車場がございますので、地図等をご参照の上、ご利用下さい。

tel:077-527-6835
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