トピックス

企業間トラブル

2017.12.09

法律的な事案の考え方

目の前に起こった事案を法律的に考えるには、法律的順序というものがあります。
会社の経営に携わる方や、会社の法務部におられるような方は、以下のように事案を考えていけばよろしいでしょう。

1 民事事件と刑事事件は分けて考える。

民事事件は、民間どうしの紛争で、たいていが金銭的な問題であることが多いです。ここで、罰するとか、罰せられるという概念は存在しません。民間である会社では、通常この民事事件として思考を進めればよろしいのです。

一方の刑事事件は、警察や検察が捜査をし、被疑者を起訴するかどうか、そして、どのような刑罰を求刑していくかという問題ですので、検察対被疑者(被告人)の問題といえます。ですから民間である会社が、誰かを罰するとかを考えて告訴等しても、肝心の金銭的問題は何も解決しないのです。

2 当事者が契約関係にあるのか契約関係にはないのかを分けて考える。

民事事件として事案を見る場合に、まず重要なのが、問題となる事案が契約関係にある当事者の問題なのか、契約関係にない当事者の問題なのかということです。

契約関係にある当事者の問題なら、なに契約の問題なのかを考えていきます。つまり請負契約なのか、売買契約なのか、賃貸借契約なのかなどです。

一方契約関係にない当事者の問題なら、たいていは不法行為の問題として考えられます。典型的なのが、交通事故です。交通事故はたいていが、見知らぬ車同士が衝突したりして紛争が生じますから、当事者は契約関係にはなく、過失による不法行為の問題として考えられるわけです。

3 なに契約の問題なのかを特定できれば、その契約の要件事実を考える。

契約関係にある当事者なら、その契約はなに契約にあたるのかを分類して考えます。その分類さえ出来れば、その契約の要件事実を考えればよろしいでしょう。例えば貸金返還請求であれば、①金銭を②貸し渡したこと③その返済期限が到来していること。が要件事実になります。要件事実に関する書籍は大きな書店であれば置いてありますので、それを買って調べて下さい。

あと、契約上の債務不履行や履行不能による損害賠償請求などの問題もそれらの要件事実を考えることになります。

4 契約関係がなければ、たいていが不法行為の問題である。

契約関係にない当事者の問題なら、たいていが不法行為の問題となります。但し、この不法行為の問題は、種類が多いです。

交通事故の問題も不法行為ですし、会社が取り込み詐欺にあったという問題も不法行為の問題です。会社が何らかの犯罪に巻き込まれるという場合、民事上は不法行為の問題となるでしょう。

不法行為の問題を考える場合も、その要件事実を考えることになります。不法行為による損害賠償請求の要件事実は、①故意又は過失により②違法に加害行為を加えられ③その加害行為と相当因果関係がある④損害が発生することです。

不法行為においては、上記の要件事実との関係で、過失相殺や、相当因果関係の範囲などが問題になってきますが、いずれも上記要件事実と関係しています。

5 まとめ。

以上のような、法律的思考回路を理解しておくと、目の前に起こったトラブルに対処するにも、弁護士等の専門家の話を聞くにも、大変役に立ちますので参考にして下さい。

2017.07.26

請負契約の仕事の未完成と報酬請求権

請負契約は、特約のない限り、請負の目的である仕事が完成しなければ、その報酬(請負代金)を請求することが出来ないのが原則です。
しかし、請負契約がその完成前に履行不能となった場合や工事の途中で解除されたなどの場合で、特約がない場合であっても、報酬を請求しうる場合があります。

1 注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能になった場合

仕事が完成しない間に、注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となった場合(例えば注文者の都合で残工事を拒否したような場合)には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法563条2項によって、注文者に請負代金全額を請求することが出来ます。ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益(例えば残工事にかかる労力や材料費等の価額)を注文者に償還すべきであるとされています。

2 当事者双方の責に帰すべからざる事由により仕事の完成が不能になった場合

このような場合、民法536条1項により請負代金は消滅し、かつこの場合には、請負人が支出した費用の償還請求も出来ないとされています。
但し、請負人の施工した既施工部分の給付を受けることが注文者にとって利益があるような場合(例えば土地の整地などの段階で工事が終わったとしても、そのことにより注文者に利益があると認められる場合)には、請負人にはその出来高に応じて報酬請求権があると考えられます。

3 請負人の債務不履行により請負契約が解除された場合

請負人の責に帰すべき事由(例えば請負人の懈怠により工事完成が予定期限に間に合わないような場合)によって、工事途中で注文者が請負契約を解除した場合で、既施工部分が注文者にとって全く利益にならない場合、請負人にその出来高に応じた報酬請求権などないと考えられます。それが仕事の完成に対して報酬を支払うという請負契約の原則に則しているし、そのように考えても何ら不合理がないからです。

これに対し、既施工部分が、注文者に相応の利益をもたらす場合、殊に注文者が契約解除後、別の第三者と請負契約を締結し、既施工部分を利用してその残工事を完成させたような場合には、工事内容は可分であり、未完成部分についてのみ請負契約の解除を認め、既になされた工事部分については契約解除を認めないものと解釈し、もとの請負人に既施工部分について出来高に応じた報酬請求権が認められるべきです。
但し、請負人のした既施工部分によっては、注文者が、請負契約の目的を達することが出来ないような場合(例えば、既施工部分がごくわずかであったような場合)、請負契約全体の解除が認められ、出来高報酬請求も認められないと考えられます。

なお、請負契約が工事未完成のまま合意解除された場合や契約解除されないまま紛争になった場合でも、上記出来高報酬請求の考え方は流用できます。

また出来高報酬請求権の考え方以外にも、不当利得返還請求権や損害賠償請求権の問題として当時者間の損失の公平な分担を図りうる場合があると考えられます。

2017.05.09

尋問の実際の風景

よく日本のテレビドラマや邦画で、法廷で弁護士などが尋問を行っているシーンがあったりします(外国の裁判のことはよく分かりませんので、洋画や外国ドラマは除きます)。

しかし、ドラマや映画で役者がやっている尋問風のもの、アレは尋問ではありません。もうほとんど謎解き独り言、あるいは演説と言っていい類のもので、尋問の体をなしていないのがほとんどです。実際の尋問は以下のようなものです。

法廷での尋問は(民事事件を前提にすると)、原告や被告や第三者つまり証人に証言して貰い、事実関係を聞き出す手続です。そうです、聞き出すのはあくまでも「事実」です。「意見」でもないし「評価」でもありません。「過去に起こった事実」を聞き出す手続です。

そして、しゃべるのは、ほとんど、原告本人や、被告本人や証人でなければならず、原告代理人か、被告代理人である弁護士、そして裁判官も、尋問においては常に質問し続ける立場なのです。質問せずにべらべら弁護士がしゃべったりすると、必ず裁判官から「あなた何しゃべってるの?質問してくださいよ!」と注意されてしまうでしょう。

例えば私が、被告代理人で、被告側で証言するのは被告本人だけ、原告側で証言するのは、原告本人と証人1人としましょう。
証言の順番は、①証人②原告本人③被告本人の順番になるのがセオリーでしょう。

この場合ですと、①証人に対して、原告代理人が主尋問、私が反対尋問、裁判官尋問②原告本人に対して、原告代理人が主尋問、私が反対尋問、裁判官尋問③被告本人に対して、私が主尋問、原告代理人が反対尋問、裁判官尋問という順番で尋問が行われていきます。

この場合、原告代理人は、自分側の証人や原告本人に対して、主尋問を行い、原告の主張に沿う証言をさせて、その立証を固めます。一方被告代理人の私は、証人や原告本人に対して反対尋問を行い、その証言の矛盾点を問いただして、原告の立証を崩さなければなりません。

被告本人に対しては、私が主尋問を行い、被告の主張に沿う証言をさせて、その立証を固めます。これに対して、原告代理人は、被告本人に反対尋問を行い、その証言の矛盾点を問いただして、被告の立証を崩しにかかります。

裁判官は、公平な観点から、聞かなければならないと思う点を、証人や原告や被告に対し、補充的に尋問します。

証人や原告や被告がしゃべる内容は、基本的に予め陳述書という書証を作成し、裁判所に証拠として提出してから尋問が行われます。つまり、尋問当日には、原告や被告や証人が何をしゃべるのか、大体誰もが分かっている状態で尋問に臨むのです。

各人の陳述書が予め出ているのですから、審理の短縮化のために、尋問時間は短くなっている傾向があります。

事案にもよりますが、例えば、裁判官から、証人や原告や被告の主尋問は各20分で、反対尋問も各20分で収めてくださいというような訴訟指揮がされる感じです。それでも、1人につき主尋問・反対尋問・裁判官の尋問で40分以上尋問を行うことになるので、3人の尋問を行えば、尋問時間はトータルで120分を優に超えます。

ですので、弁護士はのんびりとおしゃべりしている暇はありません。尋問事項のポイントを絞って、基本的に一問一答方式で尋問を進めなければ、とうてい予定の尋問時間で尋問を終えることなど出来ないのです。

証人や原告や被告には基本は「はい」か「いいえ」で答えて貰うのです。それでも足りない場合は、追加追加で一問一問を継ぎ足し、追加追加で一答一答を繰り返して貰うのです。

被告代理人の私としては、第一目標としては、被告本人の主尋問・反対尋問を無難に乗りきらなければなりません。つまり予め提出している陳述書とまるで違うような証言を被告本人がしないように、予め原告代理人の反対尋問も想定した上で、被告本人と打ち合わせしておかなければなりません。

また私としては、証人や原告本人に有効な反対尋問を行わなければなりません。有効な反対尋問とは、証人や原告本人が必ず、少なくとも高確率で、それまでの陳述と矛盾した答えになるか、答えに窮するような反対尋問でなければなりません。証人や原告本人がすらすらと説明できてしまうような反対尋問は、相手の立証の手伝いをしているだけですから、そんな反対尋問はしない方がましです。

ですので反対尋問は、よほど準備して臨まなければならないものであり、予めの準備段階で有効な反対尋問が思い浮かばないような場合は、尋問当日の証人や原告本人の証言の巧い下手を見極めて、しゃべるのが上手な証人や原告本人の場合は、早々に反対尋問を切り上げた方が良い場合もあります。一方、予め提出している陳述書とまるで違う証言をぽろぽろとしてしまう証人や原告本人の場合、臨機応変にこれらの証言の矛盾点に切り込んでいくような反対尋問をどんどんすべき場合もあります。

長くなりましたが、以上のような基本的に一問一答スタイルの尋問が、日本の法廷における尋問の実際の風景です。一般の方が見ていて面白いものとは言い難いのが現状でしょうね。ドラマじゃないんです。映画でもないんです。実際の尋問は。

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