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2017.05.09

尋問の実際の風景

よく日本のテレビドラマや邦画で、法廷で弁護士などが尋問を行っているシーンがあったりします(外国の裁判のことはよく分かりませんので、洋画や外国ドラマは除きます)。

しかし、ドラマや映画で役者がやっている尋問風のもの、アレは尋問ではありません。もうほとんど謎解き独り言、あるいは演説と言っていい類のもので、尋問の体をなしていないのがほとんどです。実際の尋問は以下のようなものです。

法廷での尋問は(民事事件を前提にすると)、原告や被告や第三者つまり証人に証言して貰い、事実関係を聞き出す手続です。そうです、聞き出すのはあくまでも「事実」です。「意見」でもないし「評価」でもありません。「過去に起こった事実」を聞き出す手続です。

そして、しゃべるのは、ほとんど、原告本人や、被告本人や証人でなければならず、原告代理人か、被告代理人である弁護士、そして裁判官も、尋問においては常に質問し続ける立場なのです。質問せずにべらべら弁護士がしゃべったりすると、必ず裁判官から「あなた何しゃべってるの?質問してくださいよ!」と注意されてしまうでしょう。

例えば私が、被告代理人で、被告側で証言するのは被告本人だけ、原告側で証言するのは、原告本人と証人1人としましょう。
証言の順番は、①証人②原告本人③被告本人の順番になるのがセオリーでしょう。

この場合ですと、①証人に対して、原告代理人が主尋問、私が反対尋問、裁判官尋問②原告本人に対して、原告代理人が主尋問、私が反対尋問、裁判官尋問③被告本人に対して、私が主尋問、原告代理人が反対尋問、裁判官尋問という順番で尋問が行われていきます。

この場合、原告代理人は、自分側の証人や原告本人に対して、主尋問を行い、原告の主張に沿う証言をさせて、その立証を固めます。一方被告代理人の私は、証人や原告本人に対して反対尋問を行い、その証言の矛盾点を問いただして、原告の立証を崩さなければなりません。

被告本人に対しては、私が主尋問を行い、被告の主張に沿う証言をさせて、その立証を固めます。これに対して、原告代理人は、被告本人に反対尋問を行い、その証言の矛盾点を問いただして、被告の立証を崩しにかかります。

裁判官は、公平な観点から、聞かなければならないと思う点を、証人や原告や被告に対し、補充的に尋問します。

証人や原告や被告がしゃべる内容は、基本的に予め陳述書という書証を作成し、裁判所に証拠として提出してから尋問が行われます。つまり、尋問当日には、原告や被告や証人が何をしゃべるのか、大体誰もが分かっている状態で尋問に臨むのです。

各人の陳述書が予め出ているのですから、審理の短縮化のために、尋問時間は短くなっている傾向があります。

事案にもよりますが、例えば、裁判官から、証人や原告や被告の主尋問は各20分で、反対尋問も各20分で収めてくださいというような訴訟指揮がされる感じです。それでも、1人につき主尋問・反対尋問・裁判官の尋問で40分以上尋問を行うことになるので、3人の尋問を行えば、尋問時間はトータルで120分を優に超えます。

ですので、弁護士はのんびりとおしゃべりしている暇はありません。尋問事項のポイントを絞って、基本的に一問一答方式で尋問を進めなければ、とうてい予定の尋問時間で尋問を終えることなど出来ないのです。

証人や原告や被告には基本は「はい」か「いいえ」で答えて貰うのです。それでも足りない場合は、追加追加で一問一問を継ぎ足し、追加追加で一答一答を繰り返して貰うのです。

被告代理人の私としては、第一目標としては、被告本人の主尋問・反対尋問を無難に乗りきらなければなりません。つまり予め提出している陳述書とまるで違うような証言を被告本人がしないように、予め原告代理人の反対尋問も想定した上で、被告本人と打ち合わせしておかなければなりません。

また私としては、証人や原告本人に有効な反対尋問を行わなければなりません。有効な反対尋問とは、証人や原告本人が必ず、少なくとも高確率で、それまでの陳述と矛盾した答えになるか、答えに窮するような反対尋問でなければなりません。証人や原告本人がすらすらと説明できてしまうような反対尋問は、相手の立証の手伝いをしているだけですから、そんな反対尋問はしない方がましです。

ですので反対尋問は、よほど準備して臨まなければならないものであり、予めの準備段階で有効な反対尋問が思い浮かばないような場合は、尋問当日の証人や原告本人の証言の巧い下手を見極めて、しゃべるのが上手な証人や原告本人の場合は、早々に反対尋問を切り上げた方が良い場合もあります。一方、予め提出している陳述書とまるで違う証言をぽろぽろとしてしまう証人や原告本人の場合、臨機応変にこれらの証言の矛盾点に切り込んでいくような反対尋問をどんどんすべき場合もあります。

長くなりましたが、以上のような基本的に一問一答スタイルの尋問が、日本の法廷における尋問の実際の風景です。一般の方が見ていて面白いものとは言い難いのが現状でしょうね。ドラマじゃないんです。映画でもないんです。実際の尋問は。

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