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2017.06.12

交通事故について

事 例

X氏は、電機メーカー勤務のサラリーマン37歳です(年収600万円)。X氏は、平成27年12月20日に、休日をとっての散歩中信号がない横断歩道上で乗用車にはねられて、右足を複雑骨折する重傷を負い、手術の結果右足が左足に比べて4センチ程度短くなってしまいました。この事故で、X氏は、2ヶ月間の入院と3ヶ月間の通院を余儀なくされ、入院中は休職を余儀なくされその間給料は出ませんでした。

加害車両を運転していたのは、35歳の自営業者Y氏で、初めての取引先に行く途中地図を見ながら運転していたため、X氏にまったく気づかずはねてしまったのです。幸いY氏は、自動車の任意保険(対人無制限)に加入していたので、X氏の損害は、保険会社から支払われるようです。

病院の診断書によれば、症状固定日は、平成28年5月30日で、その後A氏は自動車保険料率算定会から、10級の後遺障害認定を受けました。果たしてX氏は、いかほどの損害賠償請求をなしうるのでしょうか、その請求金額の目安(あくまでも目安です)を考えてみましょう。なお、X氏に過失はないものとします。X氏にも過失があれば、過失の程度に応じて、過失相殺(賠償金額の減額)が認められることになります。

まず、X氏の損害として考えられるのは、Ⅰ積極損害として、①治療関係費②入院雑費③通院交通費④装具購入費⑤弁護士費用⑥遅延損害金といったところでしょう。

Ⅱ消極損害(逸失利益)として、①後遺障害による逸失利益②休業損害、Ⅲ慰謝料として、①入通院慰謝料②後遺障害慰謝料、Ⅳ物損といったところでしょうか。なお、具体的事情によりその他の請求項目が立つ場合もあります。

以下、順を追って請求金額の目安を見ていきましょう。
Ⅰ 積極損害
① 治療費
これについては、加害者に全額請求できるでしょう。通常は、保険会社から病院へ直接支いがなされることが多いでしょう。なお、健康保険を利用するよう加害者や保険会社から要求されることがありますが、健康保険を利用するがどうかは被害者の自由です。ただ、健康保険を利用しても被害者に特に不利になることはないと思われるので、治療内容に大差がないのであれば、健康保険を利用しても良いでしょう。

② 入院雑費
入院に伴う雑費(日用品雑貨費・通信費・栄養補給費・文化費等)については、入院1日につき1,300円から1,500円程度は認められるべきでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

③ 通院交通費
これについては、電車代、バス代等の実費が認められるでしょう。但し、必要以上にタクシーを利用したりすると、請求が認められない可能性がありますので注意を要します。

④ 装具購入費
たとえば、松葉杖を購入したとか、ギブスを購入した、特殊な厚底靴を購入したのであれば、その費用全額の請求が認められるべきです。

⑤ 弁護士費用
被害者の弁護士費用については、訴訟そして判決になった場合、請求認容額の10%程度は認められているようです。しかし、裁判となる前に示談で解決する場合は、被害者の弁護士費用は、被害者負担で承諾するケースが多いようです。

⑥ 遅延損害金
遅延損害金は、事故当日から起算します(年5%の割合)。ただし、これについても、示談で解決する場合は、請求を放棄又は減額するケースが多いのではないでしょうか。

Ⅱ 消極損害(逸失利益)
① 後遺障害による逸失利益
X氏は、10級の後遺障害認定を受けましたので、後遺障害による逸失利益を請求できます。これは、身体に後遺障害が残ることにより、労働能力が減少し、これが就労可能年数の間継続することによる損害のことです。

上記逸失利益は、年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=逸失利益という計算式で求められます。X氏の年収は600万円、労働能力喪失率は10級の後遺障害で27%、労働能力喪失期間(67歳ー37歳=30年間)に対応するライプニッツ係数は15・372ですから、X氏の逸失利益は、600万円×0・27×15・372=2,490万2,640円というあたりが目安になります。

② 休業損害
これについては、事故前の現実の給与額を基礎として、受傷による欠勤のために現実に喪失した給与額を請求できます。X氏は入院中2ヶ月間の休職を余儀なくされていますから、2ヶ月分の月給分100万円(600万円÷12ヶ月×2ヶ月)が請求の目安となります。また通院により、早退・遅刻・欠勤をし、現実に給与額がカットされているようなら、そのカット分も休業損害に含めて考えても良いでしょう。

Ⅲ 慰謝料
① 入通院慰謝料
X氏は2ヶ月間の入院と3ヶ月間の通院を余儀なくされていますから、入通院慰謝料としては、154万円あたりが目安になるでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

② 後遺障害慰謝料
10級の後遺障害を負ったことに対する慰謝料額としては、480万円から570万円程度が目安となるでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

Ⅳ 物損
物損については、たとえば破れた服代、壊れた時計代、メガネ代等が考えられます。これらについても請求しうるでしょう。

以上が、X氏の損害賠償請求にあたっての金額の目安となります。X氏は、平成29年1月時点でも任意保険の保険会社と示談交渉をしているようです。

保険会社の保険金額の提示額は、一般的に言って、前述の目安金額よりも低額なようです。示談で紛争を終わらせるとしても、保険会社の提示する保険金額が、前述の目安金額よりはるかに低額であるような場合は、X氏は早期に弁護士に示談交渉を依頼するのが妥当でしょう。弁護士に示談交渉を依頼することによって、保険会社の保険金の提示額は、前述の目安金額に、程度の差はあっても近づく可能性が高まります。最近は、任意保険契約の特約で弁護士費用特約を付けておられる方も多くなっているので、安心して弁護士に依頼出来ることが多いようです。

ただ、保険会社もX氏も少ししか金額を譲らず、示談で話し合いがつかなければ、X氏は訴訟を提起せざるを得ません。最終的にX氏の請求金額がどの程度認められるかは、裁判所の判決を待つことになりますが、X氏の請求金額が全額認められるとは限りません。そこで多少不満があっても示談で紛争を終わりにするか、やはり納得できずに訴訟に持ち込むか、判断の難しい場面も出てきたりします。が、納得していないのに示談することはよろしくないと思います。

* 以上は、X氏の損害賠償請求金額の目安です。あなたの交通事故に関する損害賠償請求金額の目安ではありませんので、あなたの請求金額の目安については、必ず弁護士に相談してアドバイスを受けて下さい。なお、保険会社への保険金の請求については、基本的に2年の消滅時効にかかるので注意を要します。

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