トピックス
2017.07.25

労働契約上の解雇について

労働契約において、使用者は労働者を好き勝手に解雇することはできません。

1 解雇権濫用法理

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権を濫用したものとして、無効とされます(解雇権濫用法理、労働契約法16条)。
解雇予告を行うこと又は解雇予告手当を支給することは、懲戒解雇の場合を除いて当然のことですので、解雇予告の要件をクリアしても上記客観的合理性や相当性の要件をクリアしない限り、解雇は無効になります。なお懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇ですので、ここで書く普通解雇の要件よりさらに厳しい要件をクリアする必要があります。懲戒解雇については、また別のトピックスで説明したいと思います。

2 解雇の合理的理由

解雇の客観的に合理的な理由とは、次の4つに大別できます。
① 労働者の労働提供の不能や労働能力又は適格性の欠如・喪失
② 労働者の規律違反の行為。この意味では普通解雇も、懲戒処分の1つとしての機能を持つことになります。
③ 経営上の必要性に基づく理由であり、合理化による職種の消滅と他職種への配転不能、経営不振による人員整理(整理解雇)、会社解散などの事由
④ ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求。つまり労働協約によって、労働組合に加入しない者及び労働組合員でなくなった者を、使用者が解雇する義務を負う場合に起こります。

3 解雇の相当性

相当性の要件について、裁判所は、一般的には、解雇の事由が重大な程度に達しており、他に解雇回避の手段がなく、かつ労働者の側に宥恕すべき(許すべき)事情がほとんどない場合にのみ相当性を認めています。

4 就業規則上の解雇事由の列挙

解雇事由は懲戒事由の場合と同様に、通常は就業規則に列挙されています。
解雇の効力を争う訴訟の実際においては、使用者による解雇の客観的合理的理由の主張立証は、就業規則上の解雇事由該当性の主張立証として行われ、これが中心的争点となります。
就業規則に基づかずに行われた解雇は、客観的に合理的な理由がないものと事実上推定されてしまうからです。
そして、解雇事由該当性ありとされた場合でも、なお解雇の相当性が検討されることになります。
この意味で、解雇の場面においても就業規則の存在は、重要な意味を持つことになります。

2017.07.12

顧問契約について

会社代表者や事業主の方で顧問弁護士など不要と考えている方は多いようです。
しかしトラブルが起こってから慌てて弁護士探しをされても急にお気に入り弁護士には出会えません。
日頃から、あなたの事業の概要をよく知り、電話やファックス、メールなどで、ちょっとした契約上の疑問や小さなトラブルについて相談する顧問弁護士がいれば、大きなトラブルの予防にもなります。
万一大きなトラブルが起こっても、慌てて弁護士を探す必要がありません。
顧問弁護士は、トラブルの防止、トラブル発生時の早期対応に大変有効です。

1 いつでも顧問弁護士につながります

顧問先様は、いつでも代表弁護士に電話やファックス、メールで気軽に何でも相談できます。もちろん来所頂いて予約相談も随時していただけます。事業経営のことのみならず、社長様や従業員の個人的なご相談でも構いません。
また、代表弁護士の携帯電話番号もお教えしますので、緊急時には、即座に連絡を取ることが可能です。ただのピンスポット相談で、ここまで可能な法律事務所はないと思います。だからこそ顧問弁護士が必要なのです。

2 他士業との連携も充実

また他士業つまり、税理士や司法書士、社会保険労務士、行政書士との連携も行っておりますので、必要に応じて他士業の先生を紹介可能です。
この機会に当事務所の顧問契約をご利用下さい。

3 リーズナブルな料金

当事務所の顧問契約の内容や費用は、以下のとおりとなっております。

顧問料

顧問料は月額2万円(税別)からお受けします。ご相談の頻度に応じて会社様、事業主様と協議の上決定させて頂きます。

相談料

通常の法律相談料は、顧問料に含まれます。

契約書チェック・作成

契約書チェック費用は、顧問料に含まれます。契約書作成費用は、定型的な契約書等であれば顧問料に含まれます。
多大な労力を要する契約書チェック、契約書等作成には、別途手数料を頂くことがあります。

内容証明郵便送付

頻繁・大量に送付するものでなければ、顧問料に含みます。

訴訟等法的手続の着手金・報酬等

顧問先様が訴訟等を提起するとき、提起されたときの着手金・報酬等弁護士費用には顧問先割引があります。
普段ご相談の少ない顧問先様であれば、着手金・報酬等弁護士費用の大幅な割引や顧問料以外には特に費用を頂かない取り扱いも場合により行っております。

社長・従業員の個人的相談

社長様やご家族、従業員の個人的ご相談も顧問料に含みます。

2017.06.17

訴訟は本当に一人でできるのか?

最近、書店やネット上で、「訴訟は、本人で出来る。」といった類の本や記事を目にします。確かに、訴訟の中には、当事者本人で出来る、というか簡単にうまくいったケースもあるでしょう。しかし、ほとんどの訴訟は、そんなに簡単ではなく、当事者本人では手に負えないと考えた方がよいと思います。そのようなときのために弁護士が存在するわけですが、弁護士ですらいつも悩みながら訴訟を遂行しているのですから・・・。

たとえば、訴訟としてもっともわかりやすいと思われる、貸金返還請求訴訟。要件事実(権利の効力が発生するのに必要な事実)は、①お金を貸し渡したこと、②弁済期限が到来したこと、だけですから、訴状にそれさえ書いてあればよいわけで、証拠としては、弁済期限の記載してある借用証書くらいを提出すればよいのではないでしょうか。すでに弁済したことや、期限が未到来であることなどは被告が主張立証すべき抗弁事由に該当します。被告が抗弁を主張しない場合や、主張してもそれを立証出来ない場合、原告は勝訴判決を手にすることになります。

そうするとやはり訴訟は、原告本人だけで出来るように思えてきますが、そうではありません。上記の訴訟の目的は、あくまでも貸したお金を返してもらうことですから、勝訴判決をもらっても、それだけでは「絵に描いたもち」にすぎません。すなわち、貸金返還請求訴訟のような財物の給付を求める訴訟を行う場合には、常に「いかにして財物をこの手におさめるか」を考えながら、訴訟を進めなければ意味がないということです。

貸金返還請求訴訟の例でいえば、被告の勤務先は分かっているか(分かっていれば給料の差押えが可能です。)、すぐに転職したりしないか(転職されてしまえば給料の差押えも打ち切りです。)、被告の取引銀行・支店は分かっているか(分かっていれば預金を差押えできます。預金残高があればの話ですが・・・。)、不動産は持っているか、持っていても住宅ローン等で担保割れでないか(担保割れの不動産を差し押さえても無意味です。)、その他店舗保証金はないか等要するに差し押さえるべき財産が分かってるか、を注意深く考え又は調査しながら訴訟を進めなければなりません。上記のような差押対象物に関する被告の情報が全くつかめていないか、ろくな対象物が見あたらないのであれば、判決を取りにいくことは、非常に危険な行為です。判決をもらっても差押対象物が分からないのであれば、判決は前述のように「絵に描いたもち」にすぎず、せいぜい被告の自宅の二束三文の家財道具でも差押えしながら、被告の自発的弁済に期待するしか方法がなくなるからです。

このような進退きわまる場合は、勝訴判決をもらうより、被告に対して、何度かの分割弁済を促すとか、8割支払ってくれれば残りは免除する等ある程度被告に便宜を図った提案をして、被告に支払う気を起こさせて和解に持ち込むのがむしろ安全策の場合があります。その方が判決をもらうより回収の実があがることがあるからです。たとえば、被告が約束手形を振り出す商売人であったなら、勝訴判決なんかより、分割弁済でも、元本を負けてやってでもいいから、約束手形を何枚かもらう和解をした方が回収の実があがる可能性が高い場合もあるでしょう。以上のような状況判断は、普通の人には難しいと思います。

このように、訴訟は(特に財物の給付を求める訴訟の場合は)、勝訴するだけでは権利を実現できないものが多くありますので、注意を要します。結論として、訴訟は本人では手に負えない場合の方がはるかに多い、ということができるでしょう。やはり、勝訴が間違いない訴訟でも、勝訴判決をもらっただけでは権利が実現できない、という場合は、最初から弁護士に訴訟代理を依頼された方がよいと思われます。

2017.06.12

交通事故について

事 例

X氏は、電機メーカー勤務のサラリーマン37歳です(年収600万円)。X氏は、平成27年12月20日に、休日をとっての散歩中信号がない横断歩道上で乗用車にはねられて、右足を複雑骨折する重傷を負い、手術の結果右足が左足に比べて4センチ程度短くなってしまいました。この事故で、X氏は、2ヶ月間の入院と3ヶ月間の通院を余儀なくされ、入院中は休職を余儀なくされその間給料は出ませんでした。

加害車両を運転していたのは、35歳の自営業者Y氏で、初めての取引先に行く途中地図を見ながら運転していたため、X氏にまったく気づかずはねてしまったのです。幸いY氏は、自動車の任意保険(対人無制限)に加入していたので、X氏の損害は、保険会社から支払われるようです。

病院の診断書によれば、症状固定日は、平成28年5月30日で、その後A氏は自動車保険料率算定会から、10級の後遺障害認定を受けました。果たしてX氏は、いかほどの損害賠償請求をなしうるのでしょうか、その請求金額の目安(あくまでも目安です)を考えてみましょう。なお、X氏に過失はないものとします。X氏にも過失があれば、過失の程度に応じて、過失相殺(賠償金額の減額)が認められることになります。

まず、X氏の損害として考えられるのは、Ⅰ積極損害として、①治療関係費②入院雑費③通院交通費④装具購入費⑤弁護士費用⑥遅延損害金といったところでしょう。

Ⅱ消極損害(逸失利益)として、①後遺障害による逸失利益②休業損害、Ⅲ慰謝料として、①入通院慰謝料②後遺障害慰謝料、Ⅳ物損といったところでしょうか。なお、具体的事情によりその他の請求項目が立つ場合もあります。

以下、順を追って請求金額の目安を見ていきましょう。
Ⅰ 積極損害
① 治療費
これについては、加害者に全額請求できるでしょう。通常は、保険会社から病院へ直接支いがなされることが多いでしょう。なお、健康保険を利用するよう加害者や保険会社から要求されることがありますが、健康保険を利用するがどうかは被害者の自由です。ただ、健康保険を利用しても被害者に特に不利になることはないと思われるので、治療内容に大差がないのであれば、健康保険を利用しても良いでしょう。

② 入院雑費
入院に伴う雑費(日用品雑貨費・通信費・栄養補給費・文化費等)については、入院1日につき1,300円から1,500円程度は認められるべきでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

③ 通院交通費
これについては、電車代、バス代等の実費が認められるでしょう。但し、必要以上にタクシーを利用したりすると、請求が認められない可能性がありますので注意を要します。

④ 装具購入費
たとえば、松葉杖を購入したとか、ギブスを購入した、特殊な厚底靴を購入したのであれば、その費用全額の請求が認められるべきです。

⑤ 弁護士費用
被害者の弁護士費用については、訴訟そして判決になった場合、請求認容額の10%程度は認められているようです。しかし、裁判となる前に示談で解決する場合は、被害者の弁護士費用は、被害者負担で承諾するケースが多いようです。

⑥ 遅延損害金
遅延損害金は、事故当日から起算します(年5%の割合)。ただし、これについても、示談で解決する場合は、請求を放棄又は減額するケースが多いのではないでしょうか。

Ⅱ 消極損害(逸失利益)
① 後遺障害による逸失利益
X氏は、10級の後遺障害認定を受けましたので、後遺障害による逸失利益を請求できます。これは、身体に後遺障害が残ることにより、労働能力が減少し、これが就労可能年数の間継続することによる損害のことです。

上記逸失利益は、年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数=逸失利益という計算式で求められます。X氏の年収は600万円、労働能力喪失率は10級の後遺障害で27%、労働能力喪失期間(67歳ー37歳=30年間)に対応するライプニッツ係数は15・372ですから、X氏の逸失利益は、600万円×0・27×15・372=2,490万2,640円というあたりが目安になります。

② 休業損害
これについては、事故前の現実の給与額を基礎として、受傷による欠勤のために現実に喪失した給与額を請求できます。X氏は入院中2ヶ月間の休職を余儀なくされていますから、2ヶ月分の月給分100万円(600万円÷12ヶ月×2ヶ月)が請求の目安となります。また通院により、早退・遅刻・欠勤をし、現実に給与額がカットされているようなら、そのカット分も休業損害に含めて考えても良いでしょう。

Ⅲ 慰謝料
① 入通院慰謝料
X氏は2ヶ月間の入院と3ヶ月間の通院を余儀なくされていますから、入通院慰謝料としては、154万円あたりが目安になるでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

② 後遺障害慰謝料
10級の後遺障害を負ったことに対する慰謝料額としては、480万円から570万円程度が目安となるでしょう((財)日弁連交通事故相談センター基準)。

Ⅳ 物損
物損については、たとえば破れた服代、壊れた時計代、メガネ代等が考えられます。これらについても請求しうるでしょう。

以上が、X氏の損害賠償請求にあたっての金額の目安となります。X氏は、平成29年1月時点でも任意保険の保険会社と示談交渉をしているようです。

保険会社の保険金額の提示額は、一般的に言って、前述の目安金額よりも低額なようです。示談で紛争を終わらせるとしても、保険会社の提示する保険金額が、前述の目安金額よりはるかに低額であるような場合は、X氏は早期に弁護士に示談交渉を依頼するのが妥当でしょう。弁護士に示談交渉を依頼することによって、保険会社の保険金の提示額は、前述の目安金額に、程度の差はあっても近づく可能性が高まります。最近は、任意保険契約の特約で弁護士費用特約を付けておられる方も多くなっているので、安心して弁護士に依頼出来ることが多いようです。

ただ、保険会社もX氏も少ししか金額を譲らず、示談で話し合いがつかなければ、X氏は訴訟を提起せざるを得ません。最終的にX氏の請求金額がどの程度認められるかは、裁判所の判決を待つことになりますが、X氏の請求金額が全額認められるとは限りません。そこで多少不満があっても示談で紛争を終わりにするか、やはり納得できずに訴訟に持ち込むか、判断の難しい場面も出てきたりします。が、納得していないのに示談することはよろしくないと思います。

* 以上は、X氏の損害賠償請求金額の目安です。あなたの交通事故に関する損害賠償請求金額の目安ではありませんので、あなたの請求金額の目安については、必ず弁護士に相談してアドバイスを受けて下さい。なお、保険会社への保険金の請求については、基本的に2年の消滅時効にかかるので注意を要します。

2017.06.12

個人債務者再生(個人再生)手続について

個人債務者再生(個人再生)手続とは

個人債務者再生手続とは、住宅ローンその他の債務を抱えて経済的に困窮状態にある債務者について、将来の収入等を弁済原資として、裁判所の認可を受けた再生計画に基づき債務の一部を弁済することにより、残債務を免除してもらい、経済生活の再生を図るための手続です。

従来の制度状態では、破産手続を選択せざるを得なかった債務者も、この手続を利用することによって破産を避けつつ、債務弁済の負担を軽減し、経済生活を再スタートできるという意味で、画期的な制度ということができます。個人債務者再生手続は、裁判所に申し立ててこれを行います。

個人債務者再生手続には、①小規模個人再生手続と②給与所得者等再生手続があり②は、収入金額の変動の少ない安定収入のあるサラリーマン等が利用できます。自営業者は、①の手続を利用することになります。①と②の手続の大きな違いは、再生計画の認可にあたって、債権者の決議が必要かどうかという点です。②の手続においては、債権者の決議を行わないので、債権者の意向にかかわらず、再生計画が認可されることが可能となるのです。以下、もっと詳しく述べてみましょう。

 

小規模個人再生手続について

小規模個人再生手続は、①債務者が将来継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり(アルバイト、パートでも可)、かつ②再生債権の総額が(住宅資金貸付債権額等を除く)が5000万円を超えない場合に申し立てることが出来ます。

債務者は、いくらの金額を、どのように分割して支払うかという再生計画案を裁判所に提出しなければなりません。再生計画案は、最低弁済基準額、すなわち再生債権の総額の5分の1または100万円のいずれか多い額以上の額を返済するものでなければなりません。

再生債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは、弁済額は300万円でかまいません(但し、再生債権総額が3000万円を超え5000万円以下の場合は、その10分の1以上の額を弁済しなければなりませんので、弁済総額は300万円を超えることになります。)。

また、破産した場合より債権者に不利益になってはいけないので、たとえば120万円の価値がある財産を持っていれば、最低弁済額は120万円となります。

以上の基準により、たとえば最低弁済額が100万円であれば、これを原則3年間(例外的に5年間まで延長される。)で弁済する再生計画を立てなければなりません。月々の弁済額にすれば、約2万7800円が弁済できる余裕がなければならないということです。

なお、大阪地裁では、平成16年1月から、再生計画で定める弁済がきちんと出来るかどうか見極めるため、個人債務者再生の手続中、提出予定の再生計画案に定める予定の弁済月額を、申立人に実際に毎月積み立ててもらい、再生計画案提出の際、積み立てが出来ていることを示す預金通帳の写しを添付させるという運用を始めました。

このようにして、再生計画案を立案提出し、これを債権者にも提示して、債権者の決議を求めます。この決議において、不同意の回答をした債権者の数が総債権者数の半数に満たず、かつ反対をした債権者の債権額合計が、債権総額の2分の1を超えなければ、再生計画は裁判所により認可される運びとなります。

たとえば400万円の負債額の債務者が、100万円を3年間で弁済するので残額は免除してもらいたいという再生計画を提出し、これが認可されれば、残りの300万円の負債は免除されることとなります。

ただし、100万円については、再生計画通り支払っていく必要があります。

 

給与所得者等再生手続について

給与所得者等再生手続は、①上記の小規模個人再生の要件を満たす債務者で、②給与等定期的収入を得る見込みがあり、かつ③その額の変動の幅が小さいと見込まれる者が申し立てることが出来る手続です。

債務者が提出する再生計画における最低弁済額は、上記の小規模個人再生手続における要件以外に、2年分の可処分所得を上回る金額でなければならない、という要件が加重されます。

可処分所得は、債務者の収入額から政令で決められた費用等を控除して計算します(したがって、債務者の実際の可処分所得とは必ずしも一致しません。)が、たとえば1年分の可処分所得が70万円であれば、上記小規模個人再生手続によれば、最低弁済額が100万円であっても、給与所得者等再生手続を利用する限り、最低弁済額は可処分所得の2年分すなわち140万円となります。

これを原則3年間(例外的に5年まで延長される。)で弁済することについては小規模個人再生手続と同様です。

なお、大阪地裁において、再生計画で定める弁済がきちんと出来るかどうか見極めるため、個人債務者再生の手続中、提出予定の再生計画案に定める予定の弁済月額を、申立人に実際に毎月積み立ててもらい、再生計画案提出の際、積み立てが出来ていることを示す預金通帳の写しを添付させるという運用を始めたことは、小規模個人再生手続と同様です。

給与所得者等再生手続においては、債権者に対する弁済額が多くなってしまう可能性があるかわり、再生計画案については、債権者の決議を経る必要がありません。すなわち債権者が仮に再生計画に反対しても、裁判所が認める以上、再生計画は認可される運びとなります。

たとえば負債400万円のサラリーマンが、140万円を3年間で弁済するので残りの負債は免除してもらいたいという再生計画を提出し、これが裁判所で認可されれば、債権者の意向にかかわらず、残債務は免除されます。

ただし、140万円については、再生計画通り支払っていく必要があります。

住宅資金貸付債権に関する特則について

住宅資金貸付債権に関する特則とは、住宅ローンの抵当権が住宅等に設定されていて、債務者がローンの返済を遅滞し、期限の利益を喪失している(すなわち住宅ローン債務の一括返済を迫られている)ような場合、再生計画に基づいた弁済をすることで債務者が喪失した期限の利益を回復し、また例外的に所定の弁済期の繰り延べが認められる特則です。

すなわち、再生計画認可確定時までに弁済期が到来する住宅資金貸付債権の元本等を、債務者が再生計画で定める弁済期間内に弁済すれば、喪失した期限の利益を回復し、かつ、認可確定後に弁済期が到来する債権は原則として貸付契約に定められた弁済期に弁済することが出来る特則です。

すなわち、住宅ローンの延滞が起こっているような場合に、再生計画認可確定までに滞納した分を原則3年間(例外的に5年まで延長される。)で解消し、認可確定後に弁済期がやってくる住宅ローンについては、ローン契約通り支払って行きますということです。

なお、この特則においては、住宅ローンの利息や元本のカットはありませんから、住宅ローンについては全額支払いますということが原則になります。

もっとも、この特則は、債務者に住宅ローンの延滞がなければ、より問題なく利用しやすい特則となります。すなわち、住宅ローンについては、今までも、そして将来も、従来の契約どおりに支払いを継続するという内容の特別条項を付け、住宅ローン以外の一般の債務については、一定額の債務の免除をしてもらうという方法をとることももちろん可能です。

以上のような特則を利用する再生計画のことを住宅資金特別条項付再生計画と呼びますが、これは、小規模個人再生手続や給与所得者等再生手続に付加して申し立てるものです。

 

雑感

個人債務者再生手続は、手続の内容が複雑で、再生計画案の立案なども一般の方には困難である場合が多いと思われますので、この手続の申立は、弁護士に依頼されることをお勧めします。

また、個人債務者再生手続においては、負債がふくらんだ原因については、それが浪費であってもギャンブルであっても、再生計画の履行が可能である限り、原則として問題とはされません。破産申立を考えていた債務者が、免責不許可となる可能性が高いので、個人債務者再生手続申立に方針変更をするということもあります。

いずれにせよ、個人債務者再生手続は、破産とは異なり、負債を全部踏み倒すのではなく、そのうちの一部でも返済しようという手続ですから、破産申立を考えている方は、その前に、個人債務者再生手続が利用できないかどうかを検討してみる必要があります。

 

弁護士費用

個人債務者再生手続を当事務所に依頼される場合の弁護士費用についてですが、原則として着手金として21万円(消費税込・費用別)(債権者が15件までの場合)となっています。

但し、事案が複雑な案件、債権者が15件を超える場合や、住宅ローンを除く負債総額が1000万円以上ある場合には、あなたと協議の上、1万円から4万円程度着手金を加算させて頂きます。住宅ローン特別条項付き個人債務者再生手続の着手金は、原則として21万円(消費税込・費用別)(債権者が15件までの場合)となっています。

但し、事案が複雑な案件、債権者が15件を超える場合や、住宅ローンを除く負債総額が1000万円以上ある場合には、あなたと協議の上、1万円から4万円程度着手金を加算させて頂きます。

なお、分割払いについてですが、一括払いが原則ですが、それが困難な方の場合、最初に着手金額の一部(5万円から10万円程度)をお支払い頂き、残りを毎月4万円から5万円程度の分割払いでお支払い頂くことは可能です。

なお申立準備のための依頼者との打ち合わせ、申立後の裁判所に対する対応は、事務員任せではなく基本的にすべて弁護士自身が対応いたしますのでご安心ください。

また、個人債務者再生手続においては、報酬金は頂きません。

連絡先

弁護士法人 関西はやぶさ法律事務所
〒520-0051 大津市梅林1丁目15番30号 林ビル本店2階
(JR東海道本線「大津」駅より県庁方面に徒歩5分)
※当事務所にはお客様専用駐車場がございますので、地図等をご参照の上、ご利用下さい。

tel:077-527-6835
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