トピックス
2012.12.21

借地ー借地契約の更新拒絶の正当事由について

事例

A土地の地主Xさんは、パンの製造業者であり、営業上工場の拡大が不可欠な状態であるが、新規に土地等を取得するほどの資金的余裕がありません。またXさんは、パン工場の拡大を図るならA土地以外にないと考えており、それが営業上もベストな立地条件のようです。

一方借地人のYさんは、10年前からA土地を賃借しており、既製服製造卸売り業者であり、A土地で工場を営んできました。Yさんは、10年間この工場を営んできて、A土地周辺を基盤として得意先を有しており、経営もそこそこうまくいっています。しかしながら、工場が多少手狭になってきたこともあり、近隣に適当な工場用地がありそうな状況なので、工場を移転しようかと時々考えていたところです。

Xさんとしては、多少の立ち退き料を支払ってでも、近く期間満了となるYさんとの借地契約の更新を拒絶し、A土地で自身のパン製造工場を営みたいと考えていますが、かかる更新拒絶に正当事由が認められるか考えてみましょう。

 

正当事由の内容

XYの借地契約は、10年前からあるようですから、借地借家法ではなく、旧借地法の適用になると思われますが、契約の更新拒絶に正当事由が必要であることに変わりはありません。

この正当事由の内容は、借地借家法によって、より具体的に定められていますので、これが旧借地法適用の場合でも参考になるでしょう。借地借家法では、更新拒絶のためには、

①賃貸人及び賃借人が土地の使用を必要とする事情

②借地に関する従前の経緯

③土地の利用状況

④賃貸人が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引き換えに借地人に対して財産上の給付(いわゆる立ち退き料等)を申し出た場合のその申し出を考慮して、正当事由を判断するものと規定していますので、本件でもこれらの要素を総合的に考慮することになるでしょう。

なお、①~④の判断要素には、主従があり、①が主たる判断要素、②~④は、従たる要素と考えられます。したがって、そもそも①の賃貸人の土地使用の必要性がなければ、その他の②~④の従たる要素を具備しても、正当事由は認められそうにありません。

 

本件の場合

本件においては、①A土地の使用を必要とする程度においては、Yよりも地主Xの方が勝っているのではないでしょうか。したがって、主たる要素は具備していそうです。②の従前の経緯は、事例ではよく分かりません。③土地の利用状況という点においては、Yは、現にA土地で既製服の製造卸業を営んでおり、A土地周辺を基盤として得意先も持っており、経営もそこそこうまくやっている、ということですから、Xにとっては、あまり有利な要素とはならないでしょう。

そこで問題となってくるのが、④Xが支払っても良いと考えている、立ち退き料の額です。かかる場合の立ち退き料の算定は、さまざま考えられるでしょうかが、少なくともA土地の借地権価格(借地法により保護された借地を使用収益することにより借地人に帰属する経済的利益を表示した金額)やYの営業補償(工場移転によりYが被る営業上の不利益の補償)、工場の移転費用等が問題になることでしょう。

結局Xが、Yに対して、いくらの立ち退き料を提示できるかが、重要な要素となることでしょう。ただ、Xとしては、新たな土地等を取得するほど資金的余裕がないから、A土地の契約更新の拒絶をするわけですから、Yに対して過大な立ち退き料を提供するわけにもいかないことでしょう。またYとしては、近隣に適当な工場用地がありそうな状況なので、工場を移転しようかと時々考えていたというのですから、Xとしては、このあたりも考慮してもらいたいところです。

結論として、本件の場合、XがYに対して相当の立ち退き料の提供を行った場合、契約更新拒絶に正当事由が認められる可能性がある、といったところでしょう(相当の立ち退き料とはいくらなのかは難しい問題です。)。

もっとも、立ち退き料の点で、XとYが合意に至れば、借地契約は合意解除できることはもちろんです。

2012.12.20

借家ー敷金返還と原状回復義務について

借家契約が終了する際には、借家人は借家を原状に回復をした上で、家主に返還、すなわち借家を明け渡さなければなりませんし、家主は、借家人から預かっていた敷金等を精算しなければなりません。この原状回復義務と敷金返還について考えてみましょう。契約によっては、敷金ではなく保証金であったり、礼金・権利金を家主に差し入れている場合もありますので、その違いも検討しなければなりません。

 

敷金

敷金とは、賃貸借契約上の賃借人の未払い賃料や原状回復費用等の債務を担保する趣旨で、賃借人が賃貸人に交付する金員で、賃貸借契約終了の際、これらの賃借人の債務を差し引いても残額がある場合は、当然返還されるべきものです。

 

権利金

権利金は、その性質が一義的ではありませんが、権利金の性質は、

  • 営業上の利益や場所的利益の対価
  • 賃料の一部前払い
  • 賃借権に譲渡性を付加する対価
  • その他

後述の礼金と同じ趣旨のこともあるようです。

権利金は、原則として、賃借人への返還が予定されていない点に特徴があります。但し契約上の賃貸借期間の満了前に契約が終了した場合には、賃借人は権利金を交付したかわりの利益を十分に享受していないと考えられるため、権利金の一部返還が認められる可能性があるでしょう。もっとも、③④の趣旨で交付された権利金が返還されることはないものと考えられます。

 

礼金

礼金は、一般的な住宅の賃貸借契約において権利金と呼ばれているものと同じです。その金額が低額な場合は、法的には賃貸人への謝礼(贈与)の趣旨か原状回復費用の前払いの趣旨かと思われます。したがって、かかる礼金は賃借人に返還されないでしょう。

 

保証金

保証金とは、ビルやマンションの賃貸借に際し、賃借人が支払うもので、一定期間据え置き後分割返還するとか、賃貸借契約終了時に一定額を差し引いて返還するとかの特約がなされているのが通常です。
保証金の法的性質についても、一義的には決められませんが、

  1. 建設協力金
  2. 貸金
  3. 敷金
  4. 期間途中に解約になった場合の空室損害補償
  5. 権利金等の性質

が混在していると考えられます。

 

敷金等の自動控除特約

賃貸借建物明け渡しの際、当然に敷金等の何割かを控除しその残額を返還する旨の特約が結ばれることがあります。いわゆる敷引き特約(自動控除特約)と呼ばれるものです。

その趣旨は、家屋の賃貸に伴う通常の損傷に関する原状回復費用に充当するものと考えられますが、具体的には、

①家屋の賃貸に伴う通常の損傷に関する原状回復費用は、本来家主が負担すべきだが、これを借主の負担とする趣旨、

②原状回復費用は契約終了時に具体的に計算し判明するはずだが、敷金等の何割かを差し引くという事前の合意で簡便化をはかる趣旨が考えられます。

判例は、かかる敷引き特約の有効性について、個別のケースごとにその合理性等から判断していますが、一般的には敷引き特約を有効と判断しているものが多く、不合理な特約である場合等にその特約の全部または一部を無効として取り扱っているようです。

 

原状回復につき特約がない場合の原状回復

前述のように賃借人は、賃貸借契約終了の際には、賃借物を原状に回復した上で賃貸人に返還、すなわち明け渡しを完了しなければならず、その後でなければ、敷金等の返還を受けることが出来ません。原状回復の内容について、契約に特約がない場合を考えてみましょう。

「原状に回復する」とは、賃借人が設置したものを取り除くという趣旨であり、借りた当時の賃借物の状態を復元することとは違います。したがって、通常の使用によって古くなった物の交換をするなどの義務は、本来ありません。

しかしながら、賃借人には、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)をもって賃借物を保管する義務も負っていますから、故意や過失で賃借物を毀損してしまった場合には、毀損部分の損害を賠償する義務があります。

したがって、賃借人が原状回復義務や善管注意義務に違反して損害賠償義務を負っている場合は、敷金等からこれらの賠償額が控除されて残額が返還されることになります。

逆に、賃借物の通常使用に伴う時間的経過による損耗(自然的損耗、たとえば畳、ふすま、障子やじゅうたんの時間的経過による損耗、結露や湿気による壁のクロスの汚損など)については、賃借人は責任を負わないという結論になるでしょう。

ただし、前述のように、契約に敷金等の自動控除特約がなされている場合で、それが有効と認められる場合、自然的損耗の原状回復費用は、敷金等の控除分によって填補されるでしょうから、結局賃借人が負担している結果となりますが・・・。

 

 

特約がある場合の原状回復

それでは、たとえば契約書に「賃借人は、契約終了時、畳、ふすま、障子を全部張り替え、壁のクロス、じゅうたんもすべて取り替えを行い、その費用全額を負担する。」など一切の原状回復義務を賃借人に負わせる趣旨の特約があった場合はどうでしょう。

まず、故意過失を問わず、一切の原状回復義務を賃借人に負わせる特約があっても、大修繕に該当する部分(壁のクロスやじゅうたんの取り替えなど)については、これを賃借人の責任とするのは、賃借人に酷なのでかかる特約部分は無効でしょう。

小修繕に該当する部分(畳、ふすま、障子の張り替えなど)の特約部分についてですが、かかる特約が無効とまでは言えないかも知れませんが、特約によって回復すべき汚損、毀損等には、自然的損耗は含まれないという判例もありますから、かかる特約があっても自然的損耗があるにすぎない畳やふすま、障子などを賃借人が全部張り替えなければならない結果にはならないものと思われます。

ただ、かかる特約によって賃借人が負担する原状回復の範囲については、賃料その他の賃借条件等を総合的に検討しなければ、即断は出来ないので注意が必要です。

2012.08.20

離婚について

離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。

 

協議離婚

協議離婚は、当事者双方が合意し協議離婚届出書を市区町村長に届け出て、これが受理されることにより成立する離婚です。夫婦間において話し合いが可能で、親権者の指定や、財産分与、慰謝料、養育費の額等が話し合いによって解決できる場合は、協議離婚の方法によることが可能です。

 

調停離婚

しかしながら離婚やこれに伴う親権者の指定、財産分与、慰謝料、養育費の額等で夫婦間の話し合いがつかない場合には、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立て、話し合いを行うことになります。離婚については、いきなり訴訟を提起することは出来ず、その前に調停の申し立てをしなければならないきまりがあるのです(調停前置主義)。

離婚調停は、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てるのが原則です。家庭裁判所には調停申立用紙が備え付けられているので一般の人が自分で調停申立をすることも容易になっています。この申立用紙に必要事項を記入し、必要額の収入印紙や郵便切手、戸籍謄本を添付して提出すれば調停申立が出来るようになっています。

調停の進行は、家事審判官1名と調停委員2名の合議体である調停委員会が行います通常は、調停委員2名が夫婦双方の言い分を聞き取り、調整を行い、あとでまとめて家事審判官への報告を行います。調停の期日はおおむね1月に1度程度決められ、夫婦双方が家庭裁判所に出頭して、調停委員にそれぞれの言い分を話し、調停委員が双方の言い分を調整する作業を行っていきます。

経験豊かな調停委員が双方の言い分を聞き、双方が納得できるような譲歩を求める説得を行ってくれるので、当事者だけで話し合いを行うよりも合意が成立する可能性は高いと言えます。しかしながら調停手続きもあくまでも話し合いの手続きですので、当事者の一方がかたくなに自分の主張を変えないような場合(例えば離婚には絶対応じないと主張するような場合)には、調停は不成立となり、終了するしかありません。

当事者双方の話し合いがまとまり、離婚調停が成立するときには、調停調書が作成されます。この調停調書は確定判決と同様の効力を有し、調停成立によって離婚が成立します。申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚調停調書の謄本を添えて、市区町村長に離婚届を提出しなければなりません(報告的届出)。

 

審判離婚

調停が成立しない場合であっても、主要事項については合意にいたっている場合(離婚の合意は出来ているが、財産分与や子の監護の方法等にわずかな相違があるために調停にいたらないような場合)や、当事者の一方が遠隔地にいるために調停期日に出頭できないが離婚の意思は有している場合等に、改めて離婚訴訟を提起させるのは、申立当事者にとっても社会経済的にも無駄であることから、家庭裁判所が職権で調停に代わる審判を行うことがあります。

ただし、調停に代わる審判は、審判の日から2週間以内に審判内容に不満がある当事者から異議申立があると効力を失ってしまうので、審判を行うことが出来るケースは自ずと限られてくることになります。

 

裁判離婚

前述のように離婚訴訟を提起するためには、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立てなければなりませんが(調停前置主義)、夫婦双方の話し合いがつかず、調停不成立となり調停に代わる審判もなかったような場合には、離婚訴訟を提起することになります。

離婚訴訟は、
①夫婦が共通の住所を有するときは、その住所を管轄する家庭裁判所、

②夫婦の最後の共通の住所地を管轄する家庭裁判所区域内に夫又は妻が住所を有するときには、その住所地を管轄する家庭裁判所、

③夫婦が上記管轄区域内に住所を有しないとき及び夫婦が共通の住所地を有したことがないときは、どちらか一方の普通裁判籍の所在地の普通裁判籍所在地を管轄する家庭裁判所等に訴状を提出して提起します。

訴状においては離婚の請求だけでなく、財産分与、慰謝料、養育費の請求、親権者の指定も求めることが出来ます。しかし離婚訴訟を提起するとということになれば、通常当事者本人が行うことは困難ですので弁護士に依頼した方がよいでしょう。

 

離婚事由

離婚訴訟を提起できる場合は、次の場合に限られていて、かかる離婚事由が認められなければ、離婚等の請求は棄却されることになります。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。

また、裁判所は、①~④の離婚事由があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することも出来ます。

上記の離婚事由は、それぞれ次のような意味です。

(1)不貞行為=配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。いわゆる浮気はこの不貞行為に該当します。

(2)悪意の遺棄=正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助義務を履行しないことを言います。

(3)3年以上の生死不明=3年以上も生存も死亡も確認できない状態が現在も引き続いていることを言います。

(4)強度の精神病=その精神障害の程度が婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務、ことに他方の配偶者の精神的生活に対する協力義務を充分に果たし得ない程度に達している場合を言います。

(5)婚姻を継続しがたい重大な事由=婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことを意味します。しかし、具体的にどのような事情をもってこれを認定するかは、裁判官の自由裁量に委ねられており、このことから抽象的離婚原因と呼ばれています。

(5)に該当する可能性のある事由としては、暴行・虐待、重大な病気・障害、配偶者の過度の宗教活動、勤労意欲の欠如、性交不能、親族との不和、性格の不一致などが考えられます。

上記の離婚事由が認められる場合、裁判所は離婚等の請求を認容する判決を下します。財産分与、慰謝料、養育費の請求、親権者の指定も求めていれば、これらの請求に対する判決も下されます。離婚請求認容判決が確定すると婚姻は将来に向かって解消することになります。そして、離婚請求認容判決が確定すると、その日から10日以内に、判決謄本と確定証明書を添えて、市区町村長に対し離婚届を提出しなければなりません(報告的届出)。

また、離婚訴訟においても通常訴訟と同様に和解により終結することがあります。しかしこの場合、離婚の届出は協議離婚として届け出ることになります。

 

有責配偶者からの離婚請求

最高裁判所大法廷昭和62年9月2日判決は、一定の要件のもとで有責配偶者(婚姻関係の破綻について責任がある配偶者、例えば愛人を作って自宅を出て、妻のもとに長年帰らなかった夫など)の離婚請求も許される場合がある旨判示しました。

すなわち、この判決は、「①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期間に及び、②その間に未成熟の子が存在しない場合には、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚を許容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって(離婚請求が)許されないとすることはできない」と判示したのです。

2011.08.29

最近の過払い金返還請求の状況

最近のサラ金等金融機関に対する過払い金返還請求の状況は、端的に言うと以前より時間や手間がかかるようになっています。

というのも、サラ金等金融機関は、過払い金の返還額について、まずもって交渉段階では利息を付しませんし、取引期間に空白期間があると、それぞれの取引が別取引だと主張し、10年以上経っている取引を見つけると、過払い金返還請求権が消滅時効にかかっていると主張すること等法的な主張を当然にしてきます。

さらには、自社の経営的苦境を訴え、過払い金元本額の5割程度の返還やひどい金融機関になると過払い金元本の5%程度の返還で勘弁して欲しいなどと懇願してきたりします。

返還期限においても、やはり自社の予算の都合を訴え、半年以上後の返還期限を提案してきたり、ひどい金融機関になると、長期の分割弁済を提案してきたりします。

サラ金等金融機関の担当者が有する裁量権はあまり広く認められていないようで、ある程度の返還額増額や返還期限の早期化の譲歩はするものの、それ以上は、担当者レベルではどうしようもないという返還金額や返還期限が提案されます。

かかる金融機関の提案する過払い返還金額や返還期限に応じることが出来なければ、もはや交渉から訴訟提起に方針を切り替え、やむを得ず不当利得返還請求訴訟を提起する場合があります。

訴訟ということになれば、原告側としては基本的に過払い金額全額及びこれに対する年5%の利息を請求していくことになります。

しかし、場合によっては、判決によっても年5%の利息が認められないこともありますので、早期に過払い金元本全額に近い金額が回収できるのであれば、訴訟手続中においても訴訟外または訴訟上において、サラ金等金融機関と和解することもあります。

結局のところ、交渉段階で和解できたとしても、訴訟提起後和解、判決に至ったとしても、現実に金員の返還が実現するまでには、過払い金返還請求の受任をしてから5ヶ月から半年程度の時間を要する場合が多くなったという状況です。

もっとも上記は一般論であり、金融機関によっては、もっと好条件で解決できたり、もっと悪条件の結果しか実現できない場合もあります。

2011.02.06

任意整理・個人再生・破産のメリット・デメリットについて

任意整理・個人再生手続・破産手続について、それぞれどのようなメリット・デメリットがあるのか、以下法人ではなく個人の方を前提にまとめてみました。

 

任意整理のメリット・デメリット

任意整理のメリットは、裁判所に申し立てて行う手続ではなく、あくまでも任意の和解交渉であるため、柔軟な整理方法が選択できる点でしょう。

例えば、銀行のローンや自動車のローンは、そのまま支払い続けて、利息の高いサラ金関係だけを整理することも可能です。また、借金ができてしまった原因がギャンブルや浪費であっても、和解内容の履行が可能である限り、特に問題とはなりません。さらには、たとえ無職であって、安定収入がなくても、親族が弁済資金を用意する、退職金を弁済資金に充てる等の事情であれば、整理は可能です。

一方デメリットとしては、基本的に、負債額を利息制限法によって再計算して、それによって算出された元本額について、分割弁済なりを交渉しますので、弁済総額は、利息制限法によって再計算された元本額以下にはならないのが原則です(一括弁済を行うということであれば、例外的に元本額を割り込んでも和解が成立する場合もありますが)。

利息制限法により再計算した元本額ですら、多額で返済が困難ということであれば、個人再生や破産を検討した方がよろしいでしょう。また、任意整理は、あくまでも債権者との話し合いで和解を成立させるものですから、債権者との話し合いがつかなければ、いつまでたっても問題が解決しないというのも難点です。

 

個人再生手続のメリット・デメリット

個人再生手続のメリットとしては、やはり、負債額を大きく減額できる点にあるでしょう。

例えば、サラ金や信販会社に対する負債額が、利息制限法による再計算をしても500万円程度ある人でも、個人再生手続をとれば、100万円程度にまで負債額が減額される可能性があります。個人再生手続においては、原則として再生債権の2割か100万円のどちらか多い額を支払えばよいということになっているからです。

このように減額された負債を、3年間ないし5年間で支払えばよいわけですから、任意整理が無理でも、個人再生手続をとれば、支払いが可能になる場合が多いでしょう。

また、借金ができてしまった原因がギャンブルや浪費であっても、弁済計画の履行が可能である限り、特に問題とはなりません。

また、住宅ローン特別条項というものを利用すれば、住宅ローンだけはそのまま支払い続けて自宅不動産を保持しつつ、その他の負債を上記のように大幅カットできるのも大きなメリットです。

さらには、自営業者の方が、廃業することなく営業を継続しながら、負債額を大幅にカットできることもメリットです。

一方デメリットとしては、安定収入があることが個人再生申立の前提となりますから、現在無職で、これから就職先をさがすというような人が利用することは出来ません。

また、すべての負債を対象にしなければなりませんから、例えば勤務先から借り入れがあるという場合、勤務先も債権者に挙げなければならず、当然個人再生手続を行っていることが、勤務先に知れてしまうことになります。

また、例えば、自動車のローンは従来通り支払い続けたいと思っても、仕事で必要等の特別な事情がない限り、特別扱いすることが出来ませんので、自動車は通常ローン会社に引き揚げられてしまうということになります。

基本的に、特別扱いが認められているのは、住宅ローンだけなのです。

 

破産手続のメリット・デメリット

破産手続のメリットは、何といっても、負債が基本的に全額免除されるという点にあるでしょう。任意整理や個人再生手続のように、その後の弁済のことを考えなくてよくなるわけですから、これ以上のメリットはないと言えます。

しかし、誰でも破産を申し立てれば、負債が免除されるわけではなく、負債が増大した原因・経緯が詳しく検討されることになり、ギャンブルやブランド物の購入等浪費が原因であったり一定の不誠実な事情がある場合は、免責が不許可になる、すなわち負債は1円も免除されない場合がありますので、これがデメリットといえばデメリットでしょうか。

また、一度破産手続をとり免責決定をもらうと、破産法上その後7年間は再度の免責決定がもらえませんし、たとえ7年以上経過していても、2度目の破産申立ということになると、実際問題再度の免責決定は得にくいと思われます。基本的には、破産手続は、人生最後の切り札と考えた方が良さそうですので、これもデメリットでしょう。

また、破産手続は、ほとんどすべての財産を換価して、それを債権者らに配当する手続ですから、一定額以上の財産を有している場合、裁判所から破産管財人が選任され、その破産管財人にほとんどの財産を引き渡さなければならないことになりますので、手元に残すことが出来る財産は限られたものになるでしょう。

さらに、自営業者の人が、自営を続けながら破産手続をとりたいと思っても、裁判所からは、なかなか認めてもらえません。自営業を営んでいる場合には、何らかの営業資産があるはずで、これも換価の対象だとの認識に基づくものかと思われます。また自営業を継続しながら、負債だけを免除してもらうということでは、債権者らの納得が得られないという考慮がされているのかも知れません。

したがって、たとえさしたる営業資産が見あたらなくても、自営業者の人が破産する場合は、いったん廃業することを覚悟していただく必要があります。サラリーマンの人が破産する場合には会社を辞めなくてもよいのと比較すると、自営業者の人にとっては、かなりのデメリットになるでしょう。

 

まとめ

以上が任意整理・個人再生手続・破産手続の主なメリット・デメリットです。これらのメリット・デメリットと負債を抱える人の事情・状況を総合的に判断して、どの方法が適切かを選択することになります。

例えば、ご自分だけの判断で任意整理がよいと考えても、弁護士の目から見ると明らかに個人再生手続が適切だと判断できる場合もありますので、必ず弁護士の法律相談を受けるようにしてください。

なお、金融機関の信用情報、いわゆるブラックリストに掲載され、将来的に借り入れが困難になるという点については、任意整理・個人再生手続・破産手続のいずれを選択しても、ブラックリスト入りを覚悟していただく必要があります。

いわゆるブラックリストとは、金融機関のいわば自衛策であり、法的制裁ではありません。金融機関との当初の契約通りに支払いをしない限り、何もしなくてもブラックリストには掲載されるわけですから、これはあきらめていただくしかないと思われます。むしろ借り入れをしないで生活する工夫をしていただくことが重要と思われます。

連絡先

弁護士法人 関西はやぶさ法律事務所
〒520-0051 大津市梅林1丁目15番30号 林ビル本店2階
(JR東海道本線「大津」駅より県庁方面に徒歩5分)
※当事務所には駐車場がございませんので、お近くのコインパーキング又は大津駅前の公共駐車場をご利用ください。

tel:077-527-6835
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